お前が部活忙しいのも、イベントに興味ないのもしっとる。

せやけど・・・・・・。

彼氏の誕生日にプレゼント無しってそれは無いやろ。



20120317(謙也)



「おはよう、謙也誕生日おめでとうさん。」

「おん、おはようさん。さんきゅー白石。」

「なんや、テンション低いやん。」

「それがなー・・・・・・お前の幼馴染どないなってん・・・・・・。」


俺は白石にテンションが低いわけを話した。

最近出来た彼女がイベントごとにあまり興味がないこと。

今日の誕生日を忘れられていること。


朝、テンションが高かった俺は真っ先に最愛の彼女に会いに行った。

後姿を見つけるとまっすぐ彼女の元へ走る。

黒く、背中まである髪はさらさらと揺れ、今日も綺麗やなと頭の片隅で考える。

あまりにもわくわくしている自分に苦笑しながら肩を叩く。


、おはようさん。」

「あ、謙也おはよう。朝からテンション高いね。どないしたん?」

「・・・・・・え、まさか、今日何の日か知らんとかいわへんよな?」


しばらく沈黙が続くが彼女は目をパチパチさせてじっと見る。

そして明らかにテンションの下がった俺には困った顔で首をかしげて


「ごめん、わからへん。なんやったっけ?」


こういいよった。

首かしげるのかわいいな。

ってちゃうわ!可愛いけどちゃうねん!!おかしいやろ!!

なんで彼氏の誕生日忘れてんねや!


「って感じや。」

「謙也、まさかアイツがあそこまでとは俺もおもわへんかったわ。」

「せやろ?俺ほんまに自信なくしたわ。」

「いや、まてよ・・・・・・?」

「どないしたん、なんか心当たりでもあるん?」

「いや、なんもないわ。ほな、また後でな。」

「ないんかい。・・・・・・おん。」


白石はないといったわりに少しニヤニヤした笑みを浮かべて去っていった。

なんやねんな。

そして、午前も終わり昼も終わり何事も無く部活の時間になった。

おかしい、ホンマこれはおかしいって!

白石とか教室中でおめでとうコールがされてんのに聞こえてるはずの彼女からなんも言われへんのは・・・・・・。


おかしすぎるやろ。


え、これって振られる前兆とかそんなんちゃう?

え、ホンマに?

1年の頃から片思いしとって先月やっと実った恋やで?

・・・・・・うそやろ・・・・・・?

だれか嘘やって、言ってくれ・・・・・・ホンマあかん、それだけはあかん・・・・・・。


部活をする気にはならんかってんけど、日課とは怖いもんでいつの間にか部室の前におった。

自分のロッカーの前に鞄を置いて着替え始める。

誰が見てもへこんでる事がわかる負のオーラを纏っている俺に、後輩は容赦なく爆弾を投下しよった。


「謙也さん、そのオーラどうにかしてくれません?彼女に忘れられたからっていい加減うざいっすわ。」


部室内の体感温度が3度ほど下がった。

部室内にいた部員は原因を知ってるやつばっかやからやろな。

しーんとしたそこに白石の声が響く。


「け、謙也。今日ははよ帰りや・・・・・・?」

「なんやねん、白石まで追い出すんか。そーやろなー、こんな辛気臭いのおったらなー。」

「謙也、そ、そんなことなかよ。」

「ええねん千歳、お言葉に甘えて今日は帰らせていただきますよって。」


わかってんねん、あほらしいって。

イベント事に興味ないのは知ってた。

せやけど、もしかしたら誕生日くらいはって。

そんな期待を勝手に持ってたのは俺やから。


「ほな、おさき。」


制服に着替えてバックを背負うと部員や同級生、後輩からもらったプレゼントがガサっと音をたてた。

こんなん、アイツからもらわへんと意味ないねんて・・・・・・。

久しぶりに暗くなる前に帰るなーなんて思いながら前を見ると見慣れないものが置いてあった。

なんで家の前に自転車があんねん?

気にしながら玄関を開けるとまた見慣れない自分のと比べると小さいローファーが玄関にある。

まさか・・・・・・。

少し期待しながら早足でリビングへ近づく。


「すみませんおばさま、連絡も無くお邪魔してしもて。」

「ええんよ、ちゃんならいつでも大歓迎やわ!」


声が聞こえたことに機嫌がよくなってしまう単純さに笑ってしまう。

にしても、なんでがここにおるんや。


「ただいま。」


その俺の声にはビクッとて俺のほうを見る。

何でココにおるんやって、そんな目で。


「おかん、ちょぉコイツ借りてくで。」

「え、ちょっ!ちょっと謙也!待って!」


抗議の声が聞こえるけど、そんなん無視や。

部屋に入って手を放すとのほうを向いて問う。


「家になんの用やねん。」


自分でも吃驚するような低い声がでた。

は朝のように困った様子で俯いた。


あー!もう!何困らせてんねん俺!

誕生日に俺の部屋にがおるだけでプレゼントみたいなもんやないか!

一人でブツブツ言っている俺に困ったのか今度は泣きそうな顔をした。

え、ちょ、泣かせるつもりはないねんて!

どないしたらええねん・・・・・・。

泣きたいのは俺のほうやって。

一人でブツブツ言っていると・・・・・・。


「謙也・・・・・・あんな。」


は小さい声でぽつぽつと話し出した。

一字一句聞き逃さないようにその声を聞いた。


要約するとこうや。


プレゼントは前々から考えていたが思いつかず、

考えた末にケーキをプレゼントしようと俺が帰ってくる前に俺の家で作ろうとした、と。

ほんで、俺が予想外な時間に帰ってきて困り果てていると。


・・・・・・なんや、忘れられてるとかそんなんやなかってんな。


心配してそんしたわ。

愛されてるやん俺。


そう考えると次第に頬が緩んでいくのがわかる。

なんちゅー現金なやつやねん。

。」

「・・・・・・なん?」

「プレゼントのことやけど、リクエストしてもええ?」

「え?あ、うん。ええよ。」


そう聞こえた瞬間、の腕を引いて自分の腕の中に閉じ込めた。


「えっ?謙也っ!?」


吃驚したのかじたばたして暴れよる。

ハグしたん初めてやもんな、俺ら。

ホンマはずっとこうしたかってんで?

耳元でそういってやると急に大人しゅうなった。


・・・・・・?」

「ぷれぜんと、こんなんでええの・・・・・・?」

「何や、もっとくれるんか?」

「謙也は安上がりやね。」


「・・・・・・ほな、もうひとつもらっとこか。」

「え?」


が顔を上げた瞬間に自分の唇を押し当てる。


「なっ・・・・・・!」

「プレゼント、確かにもろたで?」


そう俺が言うと真っ赤な顔で俯いて小さな声で言葉を発する。


「たんじょーび・・・・・・おめでと。」

「ありがとーさん!」

「ヘタレ謙也のくせに生意気や。」


今はなんと言われようが平気や。

こんだけ愛されてんのわかってんから。

さっきまでのへこんでたのがうそみたいや。




次の日、うざいくらに満面の笑みで登校してきた謙也を白石が気持ち悪がったのは言うまでもない。







書いたのは3月17日前だったのにどうしてこうなった。
誕生日おめでとう謙也!!!
ヘタレじゃない君も大好きだよ!





20120315