あなたを追いかけて




私、はごく普通の大学生。


強いて違うところをあげるとすれば・・・
車が大好きで、走り屋をやっているくらいかな・・・?


私が走り屋をやっていることは去年秋名山で知り合った池谷さんしか知らない。
池谷さんがバイトしている場所で武内樹くん、藤原拓海くんと出合った。
二人ともすごくイイ人ですぐになじむことができた。


「ありがとうございましたー!」


お客さんを送り出し一息いれた所で次のお客さんの下へ走っていく。
車が好きな私としてはガソリンスタンドでバイトするのってすごく楽しいのよね。

♪〜

ちゃん、ずいぶんとご機嫌だなぁ。」


鼻歌歌ってジュース買ったところを池谷さんに見られたらしく声をかけられた。

・・・はずかしい


「あ、いや車見ながら仕事できるなんて幸せだなぁとおもってたらつい・・・」

「ははは、本当にちゃんは車好きなんだなぁ。ココ紹介してよかったよ。」

「へへへ、その節は本当にありがとうございました。」


さっきから土屋さんのテレビを見ているらしくイツキくんと池谷さんはその後夢中になってみていた。
拓海くんは適当に相槌打ってるだけのように見えるけど・・・。


「お前なぁ!あぁ、あぁって本当にドリフト知ってんのかよ!」


イツキくんが彼の回答に不満を持ったらしく少し大きな声で拓海くんに怒る。


「あぁ、知ってるよ。ドリフトくらい」

「じゃー言ってみろよ。ドリフトってどういうことだよ。」


コーナーをカーブと表現する拓海くんをかわいいなぁと思いつつ
私はしばらくそのやり取りを聞いていた。


「わっはっはっは!」


拓海くんの説明がおかしかったらしくイツキくんも池谷さんも大爆笑していた。
けれど、私はその回答に吃驚せざるをえなかったのだ。

さっきの拓海くんの説明、四輪ドリフトマスターしてないとできない回答だった・・・。
拓海くんっていったい何者?

そこへクラクションが鳴りお客さんの姿を見つける。
私たちは急いで休憩所から出るのだが・・・。


「先輩、あれって・・・。」

「!」


黄色いFD
そう、お客さんは高橋兄弟の弟 高橋啓介 さんだったのだ。

とりあえず私は右側に周り注文を承る。


「ハイオク、満タンだ。」

「はい。」


わーかっこいい人。
高橋兄弟っていえばお姉さま方の間でも有名だもんねー・・・。
うん、この格好よさだもんなぁ納得。
拓海くんと池谷さんが応対していたので私は少し引いたところで見ていた。

池谷さんは高橋さんと知り合いだったのか何かを話している。
満タンはいったところで池谷さんに何かを一言いい、そのまま黄色いFDは姿を消した。
残された池谷さんは少し考えるようなそぶりをしてこっちへ戻ってきた。


その日はそのこと以外何事も無くバイトは終了した。



ふぅー!終わった。


「お疲れ様でしたー!池谷さん、私これから走りに行きますけどどうしますか?」

「俺は今日はいいや。少し考えることできちゃって。」

「そうですか、じゃぁ私は行ってきますね。」


ふむ、高橋さんに言われたことで何か気になることがあったんだろうか。
池谷さんあれからずっと何かを考えているようなそぶりだったし。
まぁ、私が考えても仕方がないし秋名山いってひとっ走りしますかね。

家に帰り、オレンジ色の愛車カプチーノを走らせた。

頂上に着くと、黄色のFDが停車しているのが見える。
ナンバーを見る限り、高橋さんに違いないことを確信する。

話しかけてみたい気もするけど・・・。
話題ないしなぁ。
一周してまだいたら話しかけてみようかな。

FDを通り過ぎスピンターンを決めると下りを攻めはじめる。
やっぱり峠を走るのはスリルがあっていいわ・・・。

軽く流しているとバックミラーに光がうつる。
げ・・・FD!
向こうはやる気みたいねー・・・。
いいわ、最近本気出してなかったし相手しようじゃないの。


「アクセル全開。」



・・・・・・


峠を下りきり、道に愛車を止める。
向こうもその後ろにつけ、止まり、車から降りてくる。

非公式とはいえ、勝ってしまった・・・。
どうしよう。


焦っているとコンコンとドアガラスをたたく音を聞き、現実にかえる。
私は車から出るとその人物を見る。

やはり高橋啓介さんだった。


「よぉ、非公式とはいえこっちから仕掛けて返り討ちにされるとはな・・・。」

「ここは地元ですし、たまたまですよ。赤城に行ったら私が勝てる保証なんてありませんし。」

私がそういうと彼は吃驚したように私を見た。

「俺の事知っているのか。」

「そりゃぁ有名ですもの、高橋兄弟って。」

彼はその言葉に納得したのかフッと笑った。
うん、すごくかっこいいなぁ。モデルさんみたいだ。

「お前、名前なんていうんだ?俺の事は知っているからいう必要はないよな。」

「あ、はい。RedSunsの高橋啓介さんですよね。私はここら辺をホームコースにしているといいます。」

「女にこんなこと聞くのもなんだが、お前歳は?同じくらいに見えるが・・・。」

一応女性に歳を聞くことを気にしているのか言いにくそうに聞いてくる。

「21ですよ。今年大学3年になります。」

「21?同じくらいだとは思っていたが同い年か。ハチロクとのバトル前にまさか負けるなんてな・・・。」

「え?ハチロク?この近くってハチロクはめったに見ませんが・・・どこかのチームなんですか?」

「地元が知らねーはずないぜ。あんなクソはやいハチロク。」

「・・・ハチロク。すみません私はココで走っていますが見たことないですね・・・。」

そんな速いハチロクがいるのならばよくココに走りに来ている私が知らないはずない。
でも高橋さんはここで見た・・・。
時間が合わないだけなんだろうか。
でもうわさでも聞いたことないよそんなハチロク。

「ハチロクがいねぇってことは、次の交流戦だれとやんだ。あいつ意以外とやる気なんておこんねーよ。」

少し不機嫌そうに眉間にしわを寄せて高橋さんはボソっと言った。
そして私のほうを見る。

「立ち話もなんだしどっか店はいらねーか?負けちまったし今日はもう走る気しねぇや。俺がおごるしよ。」

「いいんですか?私は一人暮らしですし明日講義ないですから問題ないですが。」

「決まりだな。どっか近くに店あるか?」

「はい、近くにファミレスありますからそこ行きましょう。」





ファーストコンタクト




















2011.11.20