あなたを追いかけて あれからすぐ追いかけたものの離されてしまったのか影が見えない。 あきらめて少しスピードを落とすと五連続ヘアピンのところに車の影が見えた。 人の影も見える。 明かりに照らされて二人の顔が見えた。 啓介さんと涼介さんだ。 二人も気づいたのかこっちをみていた。 車をFDの後ろに止めると、二人に駆け寄る。 「啓介さん、涼介さん!よかった。」 「なみじゃねーか、どうした。」 「実況聞いてたんですけど、どうしても気になったことがあったので・・・。 あの、啓介さんが抜かれたのってどこですか・・・?」 「ん、この右だぜ、俺がハチロクに抜かれたのは。 どうしてもわからねぇ、インベタのハチロクが俺のFDより速いスピードで曲がれるなんて。 思い出してもゾッとする。あいつは本物の幽霊かもしれねぇ。」 「啓介さん、そのときの状況教えてもらえませんか?何か変わったことありませんでしたか? たとえば、変な音がしたとか。」 その例えに啓介さんと涼介さんは私を見て眉間に皺を寄せた。 「そういえば、妙な音がしたな。ガリッて。」 「妙な音?フッ・・・そうかわかったぞ。教えてやろうか、お前がなぜ負けたのかを。」 それでわかったらしく、説明していく。 「やつはこれを使ったんだ。」 「排水用の溝?」 「そうだ。」 やっぱり、溝走り。 イン側のタイヤをわざと落とし、引っ掛けるようにして遠心力に対抗する。 馬鹿馬鹿しい思いつきだけどこれを使えるようにするのは相当練習が必要なの。 私だってかなり練習したんだもの。 でも、拓海くんを見た事は一回としてなかった・・・。 まさか、豆腐屋の配達の時に・・・? いや、だって豆腐乗せているのに・・・。 ダン!! 「くそったれが!!!」 ビクッ 自分の世界に浸っていたら啓介さんがガードレールを蹴って怒っていた。 び、びっくりした。 全身が飛び上がったよ、今・・・。 「あのハチロクは、俺がやる。」 RedSunsのナンバーワンが登場か・・・。 鋭い目つきでそう言い放った涼介さんに少し恐怖を覚えた。 それと同時にその凛とした表情にドキッとする。 「け、啓介さん。」 「・・・なみ、タメなんだしいい加減タメ口使ってくれよ。なんか調子狂うんだよ。」 「え?えと、啓介・・・くん。」 「変わってねぇよ、啓介でいいって。」 「・・・啓介。」 「よろしい。」 なんだか男の人に対してあまり呼び捨てってしたことが無くて照れるな。 顔が熱い・・・! 夜でよかったよまったく。 「なんだお前達、付き合いたてのカップルみたいに。」 「りょ、涼介さん・・・!」 「何言ってんだよ、兄貴!」 「フフッ、目標も決まったことだし帰るか。」 そう笑って涼介さんは余裕の表情でいうとFCに向かっていった。 啓介さんと私は顔を見合わせて少し笑うと、涼介さんを追いかけた。 二人に別れを告げて愛車に乗る。 その後お風呂から上がると、啓介さんから電話が入る。 『もしもし、なみか?明日時間あったらちょっと赤城まで来てくれねぇか?』 ん?赤城まで・・・? 明日は別に予定ないし。問題ないけど。 『赤城?いいよー。明日は一日中暇してるから何時からでも。』 『マジか。兄貴がちょっと話したいことがあるみたいでさ。 兄貴にアドレスと番号教えても問題ないか?』 『あ、うん。いいよ。大丈夫。』 『じゃ、教えておくから明日直接聞いてくれよ。夜遅くに悪いな!おやすみ。』 『うん、おやすみなさい。』 涼介さんが私に話し? 何だろう、大事な弟にこれ以上近づかないでくれとか? ・・・・・・ ・・・ないか。 考えててもわかんないし、とりあえず今日は寝ようかな。 ------------------ 〜♪ 電話・・・ もうちょっと・・・寝たい・・・ はっ・・・!この電話まさか!! 『・・・もしもし』 『もしもし、高橋涼介です。椎名さんであってるかな?』 ぎゃー!涼介さんだ! もう10時半じゃない!何時まで寝てるの私・・・。 『涼介さん!おはようございます。』 『おはよう、眠そうだね。もしかして起こしてしまったかな?すまない。』 ばれてーる。 は、はずかしい。 多分10時半なら起きてる時間だしその時間まで待って電話してくれたんだよね・・・。 『い、いえ・・・!私こんなに寝るつもりなかったのでっ。』 『フフッ、そうか。・・・啓介に聞いていると思うが、話がしたくてね。 もしよければ13時から時間をもらえないだろうか。』 『はい、大丈夫です。今日は予定は入っていないので。赤城山へ私が行けばいいんでしょうか・・・?』 『いや、俺が迎えに行くよ。時間を貰うんだから送迎くらいするさ。』 さも当たり前だというように、笑いながら言いますけど・・・ 涼介さんに送迎させるとか私啓介さんに怒られそう。 ていうかファンのお姉さま方にばれたら刺されそうだよね。 『で、迎えに行く場所なんだが。』 『えっと、秋名山に行く途中の33号線沿いにファミマがあったと思うんですけど。 私の家その付近なので・・・迎えに来ていただけるならそこが一番わかりやすいかと。』 『あそこか、秋名に行く途中に寄ったな。ココからだと1時間半ほどかかると思う。 近くになったらまた連絡をするよ。それじゃ、また後で。』 『はい、失礼します。』 1時間半後に迎えに来る・・・! え、服どうしよう。化粧は軽くにしておこう。いそげ! ・・・・・・ ちょっと早いけど向かおうかな。 あ、お昼ご飯どうしよう。買った方がいいかなー。 ・・・え?あそこにいるのイツキくんと池谷さん? 二人は一緒にファミチキを食べながら談笑していた。 なんでこんな時に限っているの!! 無視するわけにもいかないし・・・。 待ち合わせ場所あそこだし・・・。 しょうがない女は度胸だ!! 「こんにちは。」 「あれ、なみちゃん。そんなオシャレしてどっか行くのかい?」 「おぉー!椎名さんチョー綺麗ッす!!」 相変わらず朝からテンション高いなイツキくん! 池谷さんも疑問もつとこがピンポイント過ぎです。やめてー。 「お、おはようございます。今から知り合いと少し出かける約束を。」 〜♪ 着信音がなる。 ディスプレイには 涼介さん の文字。 ほーりーしっと! なんてバッドタイミング。 『も、もしもし。』 『少し早いが、もうそろそろ着きそうだ。』 『あ、わかりました。私は今ついたところなんですがお昼ごはん買った方がいいでしょうか。』 『いや、どこか食べに行こう。待たせてすまないが後5分くらいで着く。また後で。』 『はい、待ってます。』 後ろから痛い視線が。 「聞きました?池谷先輩!!」 「聞いたぞイツキよ・・・。男か。」 「くぅー!椎名さん彼氏いたんっすか!残念すぎる!!」 「だよなぁ。」 何が残念なんだ! ていうか彼氏じゃないんですけど!! 涼介さんが彼氏とか私お姉さま方に刺される!! 「この際だ、俺たち暇だし彼氏見て帰るか。」 「えっ?」 「いい案っすよ、先輩。彼氏見て帰りましょう!」 「ちょっと!彼氏じゃないですってば!!」 「またまたー。椎名さん照れなくていいんですよー。」 いやいやいやいや、勘違いされたら涼介さん困っちゃうでしょ。 こんなちんちくりん相手にするわけ・・・なんか自分で言ってむなしくなった。 あー・・・・・もうどうにでもなれ・・・。 「はぁ・・・とりあえず、お茶買ってきますね。」 「おう、いってこい。」 ----------------- 「にしても椎名さん可愛かったなー。化粧すると女の子ってやっぱり変わりますね。」 「彼氏がうらやましいよなー。あんな可愛い子ゲットできるなんてよぉ。」 「っすよねー・・・。」 なんて会話がなされていたなんて私は知るよしも無かった。 急接近 2011.11.23