近くて遠い
あれから数日間、蔵とはずっと口を利いていない。
別に蔵が嫌いになったわけじゃない。
ただなんとなく、話しかけづらくて。
忍足くんはちょくちょく話しに来てくれるけれど蔵は一切近づいてこなくなった。
朝、蔵の下駄箱を見てため息ひとつ。
「なんかよけい遠くなったきがする。」
「お前ら幼馴染で一番近いはずやのになぁ。」
横から聞きなれた声が聞こえた。
「うわ、吃驚した。謙也くんおはよ。」
「おはようさん。そないに吃驚せんでも。」
謙也くんは相変わらず爽やかに笑っていた。
朝日に照らされた金色が綺麗だ。
「教室いくでー。」
「あ、うん。」
謙也くんと他愛のない話をしながら3年2組へと向かう。
教室につくと蔵と彼女さんが談笑していた。
「人の気も知らんとのん気なもんやなぁ。」
「そだ、ね。まぁ蔵にとって私なんてそんなものなのよね、きっと。」
「何言うてん、らしくないで。」
だって、心が折れそうだよ。
彼女さんが羨ましい。
そのポジション、何年も狙ってたのにな。
「!」
蔵のほうをもう一度見ると目が合った。
その時の冷たい視線が心に突き刺さるようで・・・。
蔵が手の届かないところにいることを思い知らされたようで。
気持ちを抑えられない。
「お、したりく、ん。」
「ど、どないしたん?泣いとるん?」
「ごめん、私気分悪いから保健室行ってくる・・・ね」
「お、おん。大丈夫か?ついてこか?」
「ううん、だいじょ、ぶだ、からっ。」
涙が止まらない。
急いで教室を出て廊下を走って走って保健室に向かう。
まだあまり人もきていなくてすいている廊下。
人に顔を見られたくなくてうつむきながら走る。
「さん?」
「っ!」
腕を掴んだのは田中君だった。
「なんで泣いてるの。」
「なんでも・・・ないよ。」
「なんでもないのに泣かないでしょ?人もいるしとりあえず移動しよう。」
泣いてるのを見られたくなくて素直に従う。
ついたのは屋上だった。
フェンス近くに座ると沈黙が続いた。
私が落ち着くのを待ってくれているんだろう。
「あの日、僕が帰った後・・・何かあったんだね?」
「・・・。」
私が落ち着いたのを見計らって田中君は口を開いた。
「君が次の日から元気がなくて気になってはいたんだ。」
「そう、なの。」
「この際だから、もう一回言うよ。」
「え?」
田中君の声色が変わってハッキリしたトーンに私は顔を上げた。
彼はまっすぐ私を見ていた。
「僕ならそんな顔させないし、白石君より幸せに出来る。」
「・・・。」
その続きは聞かなくてもわかってしまう。
でも、今その言葉を聞いてしまったら私は・・・。
「好きだ。付き合って欲しい。」
「っ・・・。」
気持ちが傾いてしまう。
そう思った時、屋上のドアが開いた。
「・・・。」
「!・・・蔵・・・。」
田中君は蔵の姿を見るなりため息をついて去っていった。
「返事は明日聞くよ。」
そう言い残して。
気持ちの傾いた先は
2012.02.06
いいところ・・・
かーらーの?
ぶったぎり!!!
すみません(´・ω・`)