近くて遠い
田中くんが去って、訪れたのは蔵との気まずい時間。
一秒がとても長く感じる。
今すぐ逃げ出したいくらいに。
どうして蔵がここにいるのか。
どうして蔵がそんな辛そうな顔をするのか。
私には理解できないでいた。
「・・・告白、どないすんねん。」
長い沈黙を破ったのは蔵だった。
「正直、今回のはぐらっときた、かな・・・。」
「付き合うんか?」
「明日まで、ゆっくり考えるよ。」
そういうと蔵は眉間にしわを寄せた。
そしてまた2人で黙ってしまった。
だめもとでもう告白してしまおうか。
そんな考えがよぎる。
「私、好きな人がいるって言ったよね。」
そういうと蔵は私のほうを見た。
彼から視線をはずして続ける。
「その人、彼女がいるの。私なんかじゃ勝てないような可愛い子。」
「・・・。」
「ずっと見てたけど、やっぱり二人はお似合いでいつも一緒にいて・・・。」
「・・・。」
「いい加減疲れちゃったの。だから・・・。」
「別れた。」
「え?」
蔵の言葉をどう解釈していいのかわからない。
どういうこと?
誰が?
「そいつな、今まで自分の気持ちがわからんくて付きおうとったらしいねん。」
え?
「可愛ええし、大事にしようとも思とった。せやけど。」
いったい何の話をしてるの?
「最近ある人物にものすごい怒られて気づいたらしいんや。自分の気持ちに。」
「蔵・・・?」
「自分が一番誰を必要として、大事なんか。」
「・・・。」
「お前の好きな人って、俺やろ?」
「!?」
聞こえた言葉に驚いて蔵を見る。
蔵は苦笑しながら近づいてきて手を引かれ抱きしめられた。
「ごめんな。」
「く、蔵・・・?」
謝罪の意味も抱きしめられた意味もわからず混乱する。
すると蔵は耳元でこう言った。
「気付くん遅なってごめん。傷つけて泣かせてしもてほんまごめん。」
私の胸は高鳴り期待を募らせていく。
これで断られたら立ち直れないだろうとも思いながら。
「俺も、が好きや。」
「っ・・・!」
その言葉を聴いた瞬間涙は溢れて止まらなくなる。
「遅いよ、今更。私がどれだけ・・・。」
「うん、ごめんな。」
今度の涙は悲しい涙じゃなくて嬉しい涙。
「ユルサナイ・・・かも。」
「そんなこと言うんはこの口か?」
そういって蔵は私にキスをした。
そのキスが心地よくて目を閉じる。
「好きってこんな気持ちやってんな。」
「・・・すごく苦しかったけど今はすごく幸せ。」
微笑みあうともう一回キスをした。
距離は0
2012.02.07
かーんーけーつー!
ありがとうございました!!