Stop and go.



あ、今日図書室で本借りていこうかな。

国語で聞いた話、なかなか面白そうだったのよね。

鞄を持つと図書室へ向かう。

扉を開くと男の子が寝ているのが目に入る。

あの髪型・・・確か同じクラスの人だ。

千歳千里くんだっけ。

全国区の実力のわが男子テニス部のレギュラー。

九州の方の話し方、独特の髪と190オーバーの長身ですごく目立ってるのよね。

まぁ、顔もカッコイイしね。

でもあまり教室にいないからなんとなく印象が薄い感じ。

・・・にしてもよく寝てるなー。


あ、くーちゃんに教えてあげようかな・・・。

よく千歳くん探して苦労してるみたいだし。

えーっとメールアドレスはー・・・あった。


-----------------------------------

宛名:くーちゃん
件名:お探しですか?
本文:図書室で千歳くん寝てるよー。

-----------------------------------


よし、そーしんっと。

さっさと本借りて帰ろう。


えーっと、源氏物語はーっと。

げっ・・・なんであんな一番上にあるのよ。

ていうか170cm近い私が取れないって他の女の子とか取れないんじゃないの・・・?

困ったなー、踏み台とかどっかにあったような気がするんだけど。

キョロキョロしながら踏み台を探す。


「こん本でよか?」

「え?」


見ていたほうと逆側から独特な方言が聞こえた。

見るとさっきまで爆睡していた千歳くんが私の取ろうとしていた本を持っていた。

わー近くで見ると本当に背高いんだなー・・・。

そんなことを考えながら千歳くんはキョトンとしながら口を開いた。


「ん、こん本やなかったと?」

「あ、ううん。ごめん。助かったよ。」

「大したこつはなか。そっじゃ、白石に見つかる前に部活に行くけん。」

「うん、ありがとね。」

「よかよ。ほ、さん。」


笑いながら本を渡してくれた。

その笑顔に心がときめいたのを感じた。


・・・にしてもなんでこの本だってわかったんだろう?

去っていく背中を見ながら、ふと疑問に思った。


ちとせせんり、くん、か・・・。


話したこともないのに名前覚えてたんだ・・・。

なんか嬉しい。

心がふわふわぽかぽか。

こんな感情、初めてかも。








2012/03/03