Stop and go.



涙は乾いたけど・・・。

鞄から手鏡を出して自分の顔を確認する。

・・・コレじゃぁ泣いたのわかるなぁ。

とりあえずメールで先に帰ってもらおうかな・・・。


携帯を取り出したところで着信がある。


携帯には白石の文字。

まずい、今電話に出ると声でばれるし・・・。

放っておいたら間違いなく探しに来る。

考えているうちに着信は3件になり、ピタリと携帯の振動は止まる。


探しに・・・くる・・・。


そう思った瞬間、今度は知らない番号から着信がはいる。

だれだろう・・・どうしよう・・・。


「もし、もし・・・?」

・・・?忍足やけど・・・。』


忍足くん!?

え、何で・・・?

アドレスは交換したけど・・・あーいや、白石か!!

なんで出ちゃったんだろう、考えればわかることなのにっ。


?大丈夫か?白石が電話にでぇへんって心配しとるで?』

「あ、うん。ごめん。大丈夫、だよ。」


声が変にならないように慎重に返事をする。

そうしたはずなのに・・・。


『・・・、泣いとるんか?』

「はは、そんなはずないじゃない。」


努めて明るく返すが忍足くんは納得しないような感じで白石と話をしている。


『ちょぉ、白石と変わるで?』

『え?』


返事をする前に忍足くんは白石に電話を変わる。


『もしもし?何で電話でぇへんねん。今どこにおるん?』

「え、えっと・・・。女子の部室・・・前です・・・。」

『・・・謙也が言うとる通りおかしいな。どないしたん?あー謙也、女子部の近く見にいったってや。』

「えっいいよ、そんなの。」

『もう遅いで。謙也走っていきよったさかいに。』


白石ぃいいいいい!

何余計な事・・・!

とりあえずココから移動しないと・・・。


『あ、そこから動いたらあかんで?』


・・・

一歩を踏み出す前に即行ばれた。

なんか死の宣告をされたようだ。

何故泣いていたのか聞かれたらどう答えればいいんだろうか。

理由も泣くないてたとか言ったらおかしな子だし。

かといって本当のこと言ったら今まで隠してきたものもばれてしまう。

何も言えず立ちすくんでいると、部室から部員が出てきて目が合ってしまう。

後輩や同級生は私を見るなり近づいてくる。


「・・・まだ、おったんですか?言いましたよね?はよ帰ってくださいって。」

「何でまだおるん?おっても使えへんだけなんやしさっさと帰りぃや。」

「白石、ゴメン。電話切るね。」

『ちょぉまちっ・・・。』


白石に聞かれたくなくてあわてて電話を切ったけれどきっと聞こえてしまっただろう。

覚悟決めないとかな・・・。


「自分、ほんまになんなん?1年の途中で転校してきて、2年上がって早々に先輩差し置いて部長になるし。」

「部長になったのをええことに白石くんに取り入って。」

「挙句の果てには男子テニスのお姫様気分なん?男好きもええかげんにせぇよ。」


部員が私を嫌ってたのは知ってた。

でも言葉にされるとやっぱりすごく辛い。


「・・・なんやそれ。」


後ろから女の子の声の中でひとつ違う声が響く。

この声は・・・。


「忍足くん・・・。」


目の前の同級生が私の後ろを見て言葉を発する。

彼女達は信じられないような様子で震えているのがわかる。

後ろを振り返ると困惑したような顔をした忍足くんが立っていた。


「どういうことやねん。部員と上手くいっとるんちゃうかったん?」


次第に険しい表情になっていった。

私は何もいうことが出来ない。

嘘をついたところで忍足くんはもう聞いてしまっただろう。

どれだけ聞いていたかもわからない。

私にいえることは何もなかった。







真実は






2012.02.19