stop and go.



「ゲームセット!ウォンバイ忍足4−0!」

「「ありがとうございました。」」


終わった・・・。

まさか1ゲームも取れないなんて・・・。

忍足くん、小石川君より強いけどもうちょっとくらいつけると思ったのに・・・。

小石川くんのときとは明らかに私の動きが違った。

体が重くて動かなかった。

ううん、そんなのいいわけだわ・・・。



せっかく忍足くんとの試合だったのに・・・。


、保健室いくで。」


近づいてくるなり忍足くんは私の手首を掴んで歩き出した。


「白石、体調悪いみたいやから保健室連れていくわ。」

「何言うてんの、ちゃんそんな風には見えへんで?」

「小春ちゃんの言うとおりだよ。どこも悪くないよ?」


そういうと忍足くんは真剣な顔をした。

その目に一瞬吃驚して声がでなかった。


「そんな無理するもんやないで・・・っ!!!」


忍足くんが振り返った瞬間、あれ・・・、体から力が抜ける・・・。

ガクガクとひざがわらって、目の前が真っ暗に・・・。

意識がなくなる最後に目に写ったのは凄く焦ったような忍足くんの顔だった。


「白石!何ボサッと立っとんねん!保健室いくで!こういうときのスピードやっちゅう話や!!」


が倒れたときに受け止めたのは謙也やった。

おれは反応出来ひんかったんや。

謙也の叫び声で我に返ると自分のすべきことを瞬時に考える。


「オサムちゃんに言うてから行くわ!」

「頼んだで白石!!」


謙也はそう言うとを抱えて走り出した。



* * *



部長としての仕事をしおえて保健室へ向かう。

入ると謙也とセンセが話しとった。

聞くかぎりでは熱中症らしく医者の息子だけあって

謙也の処置が早く的確やったおかげで休ませればすぐ治るいう話やった。


「白石。」

「なんや。」

「俺、ほんま自分勝手や・・・。」


急に謙也は泣きそうな震えた声でそう言った。


「なんでや。」


努めて冷静に謙也の次の言葉を待つ。

聞こえてきたんは予想外の言葉やった。


「俺、知っててん。気づいてたんや。あいつが本調子やないこと。」

「は・・・。何言ってん・・・。」

「小石川とやっとった時より体が動いてへんかった。

 せやけど、一緒にやっとるんが楽しゅうて。止められへんかった。」


小石川とやっとった時、俺も見とった。

その前に、謙也は財前とダブルスやってたはずや。

何で知って・・・。

簡単やな。隣のコートで見とったんや。を。

試合もやってへん俺が気づけんかった事に謙也は気づいた。


なんや、完敗やん。


謙也、お前かっこええわ。


「・・・俺かて体調悪いんの見抜けへんかったんや。」

「あかんな、俺ら。」

「ほんまや。ほな、はまかせたで。」

「お、おん。」

「部長やからな。そろそろいかな女子のほうも大変やろ?ほなな。」


あそこにいて俺が出来ることはもう無い。

あいつにやってやれることは戻って合同練習を無事に終わることや。


はよ、元気になりや。


お前の元気な笑顔見せてくれることで、この想いは我慢したるから。







熱中症







2011.02.04


いつも関西弁に悩む